肥満譜/狸亭
恋にも 詩にも 酒にも宗教にも
酔えない 俗物の 唯 肥満した男。
頭に描くものと言えば 何分にも
取り留めない妄想ばかり湧く 大過去。
詩の女神に見放されてからというもの
見上げても空には重い雲が垂れ込め
大地は荒れて草も木も無い 廃園の
そこにあるのは肥満した顔 虚ろな目
肥満した手足 肥満した腹 肥満譜。
巨大な肥満になると 新聞記事も
ラジオの声も テレビ画像も 皆オフ
そこを通り抜けられない まさに馬鹿芋。
あたり一面スモッグにうっすら汚れ
悲しみに覆われて 何一つ見えない。
この救いようもない懶惰のフィナーレ
治療法と言えば 唯一つ請合い
果樹園に忍び込み 純粋無垢の
ポエジーの木を探し出し 樹液を抜く。
静かに 辛抱強く 一滴ずつ この
肥満の芯に注射せよ 奥深く。
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