博士の愛した異常な数式/影山影司
れに薪を暖炉に放り投げ、時折紅茶を二人分のポットに淹れ、大き目の湯飲みに注いで啜る。博士がせびって来たら小さめの紅茶碗に残りを注いでポットを空にするし、何も言わなければ温くなった湯飲みに注ぎ足して楽しんだ。
博士は時折「どう思う?」と私に話しかける。
他人に説明することで思考を整理して、別角度からの観点を求めようとしているのだろう。もっとも、彼は私と同じ言語を話しているのに語彙の貯蔵庫はまったく別の形をしているらしい。私は彼の話を半分も理解しないまま、「釈迦に説法、僭越ながら語らせてもらいます」と前置きをした上で頓珍漢な答えをせねばならなかった。
長椅子の隣に小人の机。机の上には紅
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