博士の愛した異常な数式/影山影司
は紅茶と、読みかけの本が一冊二冊。枕に頭を乗せたり、顎を乗せたりしながら本をつまみ食いする私。足の方には暖炉があり、長椅子の傍ら手の届く範囲に薪が積んである。
頭をちょっと持ち上げれば、四歩ほど歩いた向こうに博士の大きな机が見える。
机の上には神話創造よろしく混沌がある。実験結果や良く分らない情報を詰め込んだ真っ白の印刷紙。ハノイの塔かバベルの塔か、積み上げられた印刷紙は時間が来れば崩れ去る運命にあるらしい。運がよければ机の上に。悪ければ床にだらしない感じで。
もっぱら、ここが私の住処だ。
どう思う、と博士がガサガサと机の上の資料を引っ掻き回しながら話しかけてきた。探し物を
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