ココアのホットについて/しべ
砂糖は入ってないんだ
だから
三分の二くらい口づけたら
あったかさが垂れ下がってきて
なんだか染みになってさあ
マーブルの掻き散らかした
だらしない歪みが
はっつくんだ
ぼんやりと店では僅かな風味だけが
鼻のうらを通って微熱を送り出す
懐いてくる
そ きっとね
胸と背中が樫の木目に張り付いてしまう
ここは
閉じた風箱で
人の姿がオルガンを紡ぐんだ
流れ出る
うっすらとした反射光は
不満だったり ちょっと笑わせたりと
上手に手のひらに世界をつくってくれる
少し
新聞の、メリーナイスの死が
悲しい
耐熱のガラスコップを摘むと
止まった景色が曇って見えて
時間だけ音のように進む
甘くも苦くもない上品な搾り滓で
寂しいな と思う
やはり
砂糖がないのは
ん そう
正しいんだね 。
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