アンナ/しべ
 
その部屋は森の中にある
白いアルベルベッロを思う
しとやかな蔵

水たまりを避け
ガラスの食堂を潜ってしまえば
水面への口笛を湛えた淵が

鳥が浮かぶ

きっとそのうち
梅雨の濃密な空気が曇天を膨らますのだ

サイドの湾曲した窓から
群青色の現実が流れ込んでくる

か弱い被膜に守られたアンナの零す雨は
牡丹に溶かして舐めた時にも口をあけた

ただ彼は、隣のロスコではないから
天を指しても決して中には入れない

たぶん
無神論者には広すぎるのだ

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