【電車マダム】/つむじまがり
おお 電車マダム!
そなたは 百合の花だ
墓場に咲いた 一輪の百合の花だ
私はそれをつみ取り、抱きしめ、ぐしゃぐしゃにして
口の中に入れ 地面をゴロゴロ転がりたい程に
そなたを 想っているのだ
おお 電車マダム!
そなたの 歩く姿は まさに 百合の花だ
その左右に揺れる腰の動きに 私の心は ぐらぐら揺れて
鼻孔に突き刺さるそなたの香りで 私は覚醒する
今私が死んだなら その香りを棺桶一杯に満たしておくれ
おお 電車マダム!
眼鏡を 眼鏡をお取りになると言うのですか?
その左手で その左手の親指と人差し指で!
そして慎ましやかにそっと添えられたその薬指!
ああ その薬指の指輪!
私は指輪になることも厭わない そなたの指輪になるのであれば
おお 電車マダム!
もう降りてしまうのですか!
もっと先まで 終点の先の銀河まで そなたの隣で寝たふりをさせておくれ!
戻る 編 削 Point(7)