片目の地蔵/服部 剛
 
傾いた標識に凭れる 
私のうつむく影が 
夕暮れ色の地面に、伸びていた。 

ふいに顔を上げた目線の先 
小屋に並ぶ 
七つの地蔵の真ん中に 
ひとり 
鼻は砕け、片目を開いた 
風変わりな地蔵と 
目が合った 

古びたエンジン音で 
近づいたポンコツの軽トラックが 
立ち止まる私を追い抜いて 
夕陽に照らされた道の彼方へ 
小さく 
吸いこまれてゆく 

後を追うように 
標識を離れ 
密かな病を抱えた私は 
静まり返ったひとりの道を 
のこのこ、歩き始める。 

遠のいてゆく背後から 
静かなまなざしを貫く 
地蔵の片目が 
いつまでも 
私の後ろ姿をじっと見送っていた 







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