絶望についての対話(2)/Giton
(承前)
A:Ηは人非人でした。しかし、私がそのことを理解したのは、彼が私の目の前にはもう現れないこととなった時なのでした。
私はその時以来、人を信ずることができなくなりました。私の前に愛する人が現れても、私はその人を信ずることができないために、相手は遅かれ早かれ去って行くのでした。相手が去り、私にとって、その相手が存在しなくなった時にはじめて、私は相手が私にとって何であったのかを知るのです。
このような経験を重ねて、私がいま最も信じられるものは、人でも神でもなく、純粋な名の集積なのです。数学こそは、まさにそのようなものです。
私は、毎朝日の出とともに体操場へ行って、同輩たちと汗を
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