絶望についての対話(1)/Giton
A:あなたにとって絶望とは何か?答えよ、賢人!
P:あなたは、ほかの男の胸の上で思索に耽る趣味があるのか?
答えよう。肌を重ねても、その頭脳の中までは立ち入ることのできない輩(ともがら)に直面すること、之を是れ絶望と謂う。
A:あなたは相変わらず意地が悪い。寝台の上にいる時くらいは、素直になってはどうか。
私にとって絶望とは、人を愛することはできても信じることができないということです。
あなたは黙っているから、少しく私自身について語ることといたしましょう。
私にアドニスの技を教えた男は、たいそうなのらくら者でありました。当時私は、パルナッソス近くの親戚の家に預けら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)