佐原/しべ
小野川を降る雨は
枝垂れを揺らし輪を投げる
粗目の軌跡で
暖簾を揺らしたのは
赤い尾灯の軽トラで
川沿い駆ける影も虚しい
この寒さは何なのだろう
傘立てには二輪
マティスのような跡と
ビニールに染み付いた花だ
苔の色
宿屋の灯りを掬う水面
それを背中に小豆倉を過ぎて
蛇もたじろぐ太い幹の下
瓦と漆喰が守る
雨宿り
水墨の軒先を靄の息で潤して
小雨のそれを待ってたら
子供が向こうで雪だとはしゃぐ
ニットキャプをはがして仰げば
今日はまだ冬
綿の空から頬へ触れ
誰もいない道に出る
戻る 編 削 Point(5)