名辞についての対話/Giton
 
A:およそ名前というものには実体がない。
 ぼくらの有限の時間の中で、やって来るものに対し投げつけられるのは、小間切れの仮の名であって、真実の名前は、去ったあとで、はじめて附けられる。だから、いつも名前が附けられた時には、実体は過ぎ去っており、存在しない。
 名前は、実体をつかみとることができない。だから、名は虚妄だという人もある。しかし、ぼくらには名前以外に何があるだろう?名前の集積が森羅万象であり、ぼくらだ。
 実体は存在しない。それは、いつも過ぎ去っており、消えている。
 名のみが存在する。

P:実体は存在する。名付けを拒む実体が存在する。
 春芽吹く木の芽が、毎年同じでなく
[次のページ]
戻る   Point(2)