名辞についての対話/Giton
A:およそ名前というものには実体がない。
ぼくらの有限の時間の中で、やって来るものに対し投げつけられるのは、小間切れの仮の名であって、真実の名前は、去ったあとで、はじめて附けられる。だから、いつも名前が附けられた時には、実体は過ぎ去っており、存在しない。
名前は、実体をつかみとることができない。だから、名は虚妄だという人もある。しかし、ぼくらには名前以外に何があるだろう?名前の集積が森羅万象であり、ぼくらだ。
実体は存在しない。それは、いつも過ぎ去っており、消えている。
名のみが存在する。
P:実体は存在する。名付けを拒む実体が存在する。
春芽吹く木の芽が、毎年同じでなく
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