3月/Giton
 
峯から峯へ、乢(たわ)から乢へ、
鈴をたくさん着けた馬車が
夜どおし走り回っている;
春の夜は銀色で、君の眼は茜色、

せせらぎは白いほむら、君の髪は緑、
放射するコロナ、鼓動する静かな祈り、
もう寒くはないのに、君の肌は花の芽
のように縮み、少しずつ膨らみ、ぼくの手

のなかで開いていく。そして、朝露ひかる
草の奥で疲れはてた鹿のように眠り、
鈍い一日がまた始まる。

春の夜の魔法は解け、渓の水はめぐり、
ぼくたちは仕事に励む;木の間から寝ずに
見守っていた鵺鳥が音を立てて飛び立つ。

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