晩鐘/杉菜 晃
 


夏も終わって秋が忍び寄っている夜
北の方角で爆弾の炸裂する音がした
花火の季節はとうに終わっている
また爆弾の音
今度は南の方角で起こった
私たち狙われているのかしら
女が震え声で言った
幸せになろうとすると
みんな狙われるのさ
と男が言った
どうする私たち
また爆発音
今度は爆弾ではなく射撃音だ
いよいよ迫って来たな
男と女は銃弾の下を掻い潜って
駆け出していく
幸せってそんなにいけないものなの
女は男に手を引っ張られながら言う
こう真っ暗な世の中ではね
闇に埋もれているほうが安全なのさ
二人はほとんど外灯の消された公園に来た
そこで落葉の中に潜
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