むささび 渡る/Giton
君の面影 繁きこのごろ
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国境 嶮(さが)し嶺(ね)生ふる 石(いは)つつじ
はしき小鐘を 人の知らなく
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すだ椎の きんに耀く たそがれの
燃ゆる長髪 背子し思ほゆ
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冬越しの 枯れ葉のこれる いぬぶなの
幼き枝に 粉雪の舞ふ
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雪深み 山路にしるき 踏み跡に
水源巡視の 人らを思ふ
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風は吹き 雪は積りて 融けなむを
路辺ふたもと 墓標(はかしるべ)
立つ
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待つ君の 肩にかかれる 白雪は
底冷ゆる夜に 温かきかな
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草繁る 隧道深く アブトの音(ね)
耳を澄ませば 風吹き抜ける
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