むささび 渡る/Giton
 
君の面影 繁きこのごろ

    ☆    ☆

国境 嶮(さが)し嶺(ね)生ふる 石(いは)つつじ
はしき小鐘を 人の知らなく

    ☆    ☆

すだ椎の きんに耀く たそがれの
燃ゆる長髪 背子し思ほゆ

    ☆    ☆

冬越しの 枯れ葉のこれる いぬぶなの 
幼き枝に 粉雪の舞ふ

    ☆    ☆

雪深み 山路にしるき 踏み跡に 
水源巡視の 人らを思ふ

    ☆    ☆

風は吹き 雪は積りて 融けなむを
路辺ふたもと 墓標(はかしるべ)
立つ

    ☆    ☆

待つ君の 肩にかかれる 白雪は
底冷ゆる夜に 温かきかな

    ☆    ☆

草繁る 隧道深く アブトの音(ね)
耳を澄ませば 風吹き抜ける


戻る   Point(0)