ディヒ (きみを)/Giton
から離れないシューベルト、
フィッシャー=ディースカウのバリトン、
有線放送とファーストフードがまじり合う混沌、
地下室に籠る煙草の煙
のように漂う広場の眠り、
蛍光灯に照らされたプラットホームは
誰もいない河岸、眼の奥の濃霧が、
ここに君が立つことは、もうない
のだろうね、と意地悪な右脳にささやく、
あしたにならねばわからない、
と左脳が背伸びして答える。
わかっているんだ、ほんとうの悲しみは
明日やってくるということを、
その長い長い道を突き抜けた先には、
きみがさびしそうに歩いていることも。
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