ディヒ (きみを)/Giton
 
晴れているのに月のない空へ
昼間のように開いた駅の前、
二つ、三つ、稀な人影流れ、
出て、入り、立ち止まり、また歩き出す眺め、

いまごろ、あの人影になっていたかった、
ぼくののぞみは、ただそれだけなのに――
"Und, ach, ich kann es nicht glauben,
dass ich DICH verloren hab."

「ああ、ぼくは信じられないんだよ、
きみを失なったということが。」
DICH (きみを) に置かれたその強いアクセントが、
メープルの効いたコーヒーのように淀む。

階段を降りて外へ出ると、
きみが頭から
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