楽園/山中 烏流
 




・庭園にて


裸足のままならば
何処にでも行けるのだ、と
喉から生えた腕が
口走っている

嘘吐きの元は、この腕です

そう囁く林檎をかじりながら
その腕を引き抜くと
私は、何故か
話せなくなってしまった



・湖の夜


枯れ葉の擦れ合う音が
粘り気を携えて
私の耳元で跳ねている

そのせいか
水面に映り込んだ月が
まるで
ぽっかりと開く穴のような
幻を見た

宙吊りにされた紐が
私を見て、笑っている



・謁見


私の顔を覗き込んでいる
そのひとの顔形を
私が知ることはない

名前を呼ぶ
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