祖父へ/奥津 強
 
あれは 炎と 誰かが言ったが
つかむものはいなかった
祖父は 過去へ向かい
一閃に 死体を 乗せていく

それらに 名がつく事はあっても
私の 怒りは 極めて 加工される
抑揚を知らない 疑い
裏切りを 人工的に 名を つけられる

戒名を 捨てて 薔薇を つかめとは 昭作の言葉だ
つまり 酒だろうが 女だろうが
不安を 寝かせて
転がり落ちていく

今までの 感謝が 午後の 閉鎖にあれば
そこに 雨は 流れないだろう
祖父は知っている
忘れる事を 知るように
消されもしない 目は 過去に向いていても

何か 名前があった
蛍田 城山
祖母は もう 待っているかもしれない

火を 絶やすな!
宣言してしまえ

もうすぐ 小田原が 暗く染まっていくように
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