シャボン玉/ほしのみくず
 

命をわけたシャボンが
あまねく広がる田の空を
おもむろに這いのぼる

シャボン、シャボン
あなたを見上げて
遠く咆哮を響かせます
置いていくなと、低く
低く唸るのです

大地をたゆたう泡沫の玉
暖色の命を吸い込んで
焔のような光を放つ
悲しみを孕んではかなく舞うんだ

シャボン、シャボン
茶色い背中に西日を受けて
まだ息もない地に浮くあなたを
見つめています

舐め終えた傷口がひりりと痛んで
私の前脚を痺れが包むよ
それはまるで
破ぜる時のあなたの痛みのような

凍てつく故郷に吹く風は
私の髪を梳いて
記憶を掬って
呼吸ごと攫っていくんだ

シャボン、シャボン
私を置いて、行かないで


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