『硝子の箱』/あおい満月
 
 淡い硝子の底の
 蒼い水溜まりへ
 注がれゆくわたし
 
 なにかをすべてやりつくし
 かたちだけが残った
 透明な輪がいくつも
 浮かぶ水面
 
 もしもそこに
 一輪の花が咲いていたなら
 
 呼ぶだろう 花へ
 唄うだろう 花へ

 いつしか花は風に消える
 それでも 花の記憶は
 はじまる もしも
 それが花ではなく
 あなただったら

 あなたが消えても
 あなたは いる
 だんだんあなたは
 つよくなる
 わたしという世界で

 あなたはわたし
 わたしという
 花を見つめながら
 暗雲の空の下
 混沌たる世界の淵を游ぐ

 今は
 いつの日にか辿り着く
 何かへ

 淡い硝子の底に
 迷路の音が響く
 壊れゆく 蒼い水面
 その断片に 映り込む
 なみだのひとみ
 
 あいたいと云う
 かすかなひかりを
 こぼしながら



                    2008.11.11(Tue)

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