水槽/アングラ少女
「わたしたちのテーブル
なめらかなはだかの木目
そこに並べられた食器、グラスたち
ずっと交わらない視線」
隣で私のくわえる煙草を指して――
「浄化された石、」それは
不在の表層に羽根を生む
まぶしすぎる立体構造の内燃から
混沌の花嫁を生む
都会の水底に達した家族や
私たちのような
くたびれた帰還者がつどう
口いっぱいに
緑の粟を吹くのではなく
夕霧をさえぎる漆喰の壁に
吊るされた燭台からふる
静謐な点滴のほの明かりが
透明な藻草の息づかいや
苔むした記憶の背景をきわだたせる
やがて
弦楽器を担いステージへ上る
沈鬱げなある青年の
老母がつぶやく
「わたしは見た、」と
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