『父へ〜詩人・上手宰氏へ〜』/あおい満月
時折見せる
あなたのかなしい微笑に
わたしは茜の放課後をみる
琥珀に澄んだ
あなたの真直ぐな瞳のなかに
わたしはゆらめくさかなの影をみる
あなたは そう いつもやさしい
いつでも誰かの苦しみを
大きなことばで そっと受けとめる
あなたは そう いつも凛々しい
小さくも邪悪な波を 指先ひとつで
征するちからを秘めている
あなたは 父だ
わたしの 父だ
ずっと探し求めていた
ささやかな愛
わたしにも「父」は居るが
16の頃 こころの父を失った
あなたは教えてくれた
愛あるからこそ ひとは永遠だと
あなたは今 幸せだ
愛する妻と 子供たちに囲まれ
愛の詩を書き続けて 四十余年
老若男女すべてのものに
ピンク色の薔薇のブーケをたむける
わたしにも 約束をくださった
わたしとわたしの愛する人を
永遠に 見守ることを
いつかわたしも
あなたのように 愛ある詩人になる
いつか この身が
滅んでしまっても
第三詩集・『絆』より
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