げしのかげ/Giton
い、
ただ、あなたの方角に、白いメッセージを発信し続けていた。
いつの日か、あなたが、
そのなにもないメッセージに気づいて、
不可解の思いに囚われながら、
この草原へと彷徨って来るとき、
ぼくは、置き去りの標木の陰で、
あなたの様子をうかがっているだろう、
あなたの燕尾服の襟が、汗で汚れ、
あなたの泥だらけの靴が湿地に踏み込むのを、
ぼくはいとおしく眺めながら、
やっとあなたが帰って来たことを知るだろう。
もう、太陽は沈むことがなく、
その日は、時間の果てまでつづくことになる。
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