げしのかげ/Giton
 
  げしのかげ
  たんせんに
  のでださい
  こいのいた
  しろみだし
(タテ/ヨコ/ナナメに読んでください)


夏至の真昼、
廃止された単線のレールをたどっていた、
バラスの草が延びきって、
周りの草原と区別できなくなっていた、

一本だけ取り残された標木に、陽が垂直に注いでいた、
腐りかけた板に、記された文字は消え、
まるで、あなたには見えないメッセージの存在を主張し続けるかのように、
それはその場所に立ち続けるのだった、

置き忘れられた恋の板、あるいは白い見出し
とでも名づけるほかはないその木片は、
自分の影さえ落とすことができない、
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