『夜をいきる』/あおい満月
 
 いつも
 満たされない夜を求めて
 光を舞う蝶でありたい
 描けるしあわせはいらない
 とまりぎに 腰をかければ
 灰になってしまうだけ
 足跡を水にとかして
 あなたからあなたへ
 あなたの手と手のあいだに
 生きている わたし
 あなたの瞳と吐息を糧として
 わたしは夜に巣くう蝶
 ことばの羽根を月にひろげて
 わたしの夜に あなたの夜を想って
 眠れずに 眠らずに
 羽根にからだをうずめて
 なきながら うたいながら
 たまごを硝子に産みつけて
 いつか このこたちが
 孵ってあなたを満たして
 外へ流れて街中にわたしが溢れて
 消えても わたしをきっと
 見つけてね わたしはきっと
 あなたの隅にいる
 風のように 眠りながら
 羽根を鳴らして
 あなたの血を
 無傷に吸っているから

   
 第二詩集・『失調症』より
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