『真昼の月』/あおい満月
 
 月は
 見えない音をたて
 真昼の闇の滝を滑り堕ちていく
 否
 堕ちるのではない
 昇るのだ
 わたしを介してあなたへと
 絶望に煌きながら
 地の底の淵で
 やがて幾人もの人間が
 その微笑を踏み潰しても
 切り堕とした刃の音と記憶は
 とこしえに生きる
 体温を失っても
 あなたのぬくもりは
 根深き奥まで響いている
 終わりなきレクイエム
 生のためのアリア
 今昼 新たなひかりをあびて
 あなたへと あるきだす
 愛しいふくよかなぬくもりへ


 第二詩集・『失調症』から
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