僕は見えないものは愛せないのです./Anonymous
青空が好きなんて、きみはっ!
と
心理学者はためいきをついた。
子猫の鳴き声が好きなんてなんということを!
と
心理学者は憤りを隠そうともしなかった。
好きな季節が春なんてぬけぬけと!
と
心理学者は匙を投げた。
今君はなにを考えてるんだい?
心理学者は頼むから、といった視線を投げかけてくる。
「彼女の唇に
苺ジャムを塗るのと
メイプルシロップを塗るの
どちらがいいかな、と思って」
心理学者は残ったわずかな気力をふりしぼり、さらに続けた。
今君はなにが怖いんだい?
「あの無遠慮な
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)