業務日誌/竜門勇気
 
温を思い起こさせた。
悲しくて涙がこぼれた。しかしその理由は分からない。それを教えてくれる ”過去” を支える ”物事” が俺にはないからだ。垂れ落ちる涙と ”剥き出しの悲しみ” が震えている。俺の中で、確かに。
俺は大きく振りかぶった。頭では ”外敵を威嚇する猿” をイメージしたが上手くいかなかった。狙う先を睨みつける。ひらひらと可憐な毒を撒き散らす ”奴” をめがけて”今ここにある感情”をぶつけろ!

しかし次の瞬間。力を込める寸前。俺のこめかみに光と影が流れ込んできた。
あまりの眩しさと絶望に身が震えた。

菩薩(輪廻を飛び交う蝶はやがて翅を休めるとパリパリと音を立て、驚くべき
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