Petloss/シリ・カゲル
盛で、そしてよく食べた。次第になつきはエルロイに恋に似た感情を抱いた。だがエルロイのほうはなつきをただの召し使いとしか思っていないようだった。
二年が経過し、なつきは調理学校のパティスリーコースを卒業した。就職部の斡旋で、青山にある有名洋菓子店に勤めることになった。なつきにはスポンジを焼く仕事が与えられた。くる日もくる日もなつきはスポンジを焼き続けた。それは退屈な仕事だった。だがあるとき、なつきはスポンジを焼くという行為の奥深さに目覚めた。スポンジの出来は、その日のなつきのメンタリティーに大きく左右されるのだった。それからというもの、なつきは自分のメンタリティーを意識して制御するようになった。
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