復活の手 /服部 剛
 
祖母がこの世を去る朝 
何処か遠くへ
吸いこまれそうな場所から 
必死で僕の名を呼ぶ声に 
目を覚ました 

数日後、教会の告別式で 
神父は聖水を遺影に撒いて 
額に納まった祖母の笑顔に 
ひとすじの涙が 
頬を伝った 

祭壇の脇に立った僕が 
震える声を振絞り、聖書を朗読すると 
あちらこちらで、漏れ始める
祖母を愛した人々の、涙声・・・ 

あふれるほどの花々で
埋め尽くされた棺桶に
祖母の寝顔は微笑んで
不思議と口を開いてた 

職場に戻って十日後の昨日 
勤務後の休憩室で
くたびれて寝ている僕の
右膝に 
誰かの手が、ふれて 

目を覚まして 
身を起こした 
無人の休憩室 

時計の音だけが 
いつまでも、響いていた 







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