国道/しべ
 
キーを回すと漫画となって動き出す

空間なんか細切れだ
進む先には短針の裏側が落ちている

そのスピードで世界を巻き込み
流れる枯れ草の天井を掴み取れ

右足で踏み込め
県道を離陸するぞ
日差しに焦げた道
甘く氷砂糖みたいだ

ああ
見えるぞ

松の枝の向こう
牛舎の先
かすみが浦の
ずうっと先

名前を拒絶した稜線の塊が
鈍器のような雲の下
巨人の速度で押さえつけてくる

眼球を満たす景色
油が溶けるくらい深い青
あれが山肌だなんて

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