人魚・終 〜開放〜   【小説】/北村 守通
 
繰り返していた。私はしばらく一人でそれらを見上げていた。風はいつしか止んでいた。人魚は既に私のもとを去っていた。握り締めていたはずの、あの赤い蝋燭もいつしかなくなっていた。多分、創造主のもとに返ったのだろう。
 もう彼女が海と陸の狭間で、一人で思い悩むこ必要はないように思われたので、私も適当な頃合を見計らって帰ることにした。
 
 その前には勿論、一夜の宿と温かいコーヒーへのお礼と、さよならを決して忘れはしなかった。



                               <終>
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