歳ととることについて考えさせてくれる詩集 壷坂輝代『探り箸』/イダヅカマコト
 
る連作
II章は彼女のご両親を中心にした家族の作品
III章は彼女の内面と、他者とのつながりの作品

となっています。

ご自身の経験をつづられていくこの詩集は、「書かれている詩」よりも、「見つけ出された詩」のほうが面白い詩になっています。

例えば、II章のなかで、母親の、恐らく乳がんの手術をみまもった経験を描いた『ほどかれる』は、この詩を見つけ出したときの壷坂さんを自分に引き寄せて考えうる詩です。

{引用=
ほどかれる

―切ってください
母のためらわない声がひびく

わたしの声は喉元で止まったままだ
医師から差し出された選択肢
そのひとつをえらんだ母の決
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