空、ひと/山中 烏流
 





工事現場に木漏れ日が舞って
例えば、私なら
指差したりするような時間
風上から流れるのは
どこかの夕飯の匂い

昨日より長い夕焼けが
何より、確かな時間を告げている

歩きながら読んでいる本は
さっきそこの古本屋で買った物で
栞を貰い忘れたから
きっと、読み切ることはない

近所の子供が吹いたシャボン玉が
心なしか汚く見えて
あの子はどんな「ひと」なんだろう、と
考えてみたりする


紫を装う空が
あんまり余所余所しいものだから
そっぽを向いてみた
何も変わらないことは
初めから、分かっている

いつも
私を置いてけぼりにし
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