草原のズブロッカ/いわぼっけ
狸小路のロシアン料理店 友人の家族と食事に来た
店の名は忘れた 目立たない小さなお店
壁際を飾るように 多くのウォトカの壜が並んでいる
短い北国の夏を祝うがごとく まずは生Beer
そして交歓の悦びのために ズブロッカで乾杯
トマトの効いたボルシチ ほくほくのじゃがいも
ロシアの草原は春と共に急成長して
早い秋にはすでに枯れ果てる
ズブロッカは そんなロシアの枯野の香りが漂う
美しい自然を溶け込ませている正真正銘の
香り高きウォトカなのである
早いピッチで乾杯を繰り返し 次第に酩酊も早まろうか
楽しい一日に思いを巡らす間もなく
部屋のソファに腰掛けた途端 意識がなくなった
ああ 本来は草原の遊牧者たる者よ
巷間に酔い痴れて 草原を忘るる莫れ
草原は常に汝を受け容れてくれるであろう
草原のズブロッカも汝の胃袋を熱く浄めん
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