寒さの中/渡辺亘
冬
一日一日
足を踏みしめて
歩いています
冬
極寒の中を
自らの息で
手を暖めながら
歩いています
冬
故郷の空は
青く澄んで
光っています
冬
一日の労働のあと
風呂に入り
感謝と共に
床に就きます
冬
すれ違う人達は
みんな無口で
足早に家路につきます
冬
春のための準備を
桜は何も言わず
しています
大事なことが
忘れ去られていく世の中で
大事じゃないことが
騒々しい世の中で
冬
大地は眠り
春の準備をしています
冬
私の命も
芽吹く準備をしています
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