山葡萄の血/亜樹
仕方なく悦子は、毎日家に帰ってから、母親に見つからないように石鹸で丹念に手を洗っていた。
その日、朝から悦子は下腹部が酷くだるかった。
それでも、学校までは歩いていかなければならない。
授業の内容など、頭に入るはずもない。長い一日が漸く終わり、いつものように山葡萄を握りつぶしながら悦子は家に帰った。
手洗い場で手を洗う。石鹸で、ごしごしと。
そのとき、不意にどろりと下着の中が汚れた感触がした。
怪訝に思った悦子が、トイレの中に入り、下着を下ろすと、どす黒い染みがべったりと付着していた。
ああ、どうしよう、と悦子は思った。
ああ、どうしよう、山葡萄の毒だ、と。
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