君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
にはまだまだ、したいことがたくさんあったのに。
 気持ちのよい空気を運んでくる窓のサッシに手をついて、軽く身を乗り出してみた。遥か下に、コンクリートの地面が見える。ここは五階だから、それなりの高さがある。ここから跳べば、即死とはいかなくても多分死ねるだろう。
 これからまだしばらく、私の心を内側から蝕んでいくこの暗い感情と付き合っていかなければならないのならば、それよりも遥かに楽な選択なのではないだろうか。このサッシを乗り越えるという行為は。
 サッシを握る手に力がこもる。あとは鉄棒の前回りの要領で、体を向こう側に放るだけ。ほんの一瞬で片はつく。
三十秒ほどそうした後、小さな笑いを漏らしな
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