これっぽっちも愛してない/百瀬朝子
 
愛してない 愛してない
これっぽっちも愛してない
やさしく触れてこようとするその手が憎いの
「かわいいね」
と、言いながら
あたしを愛でるその行為
あたしの知らない快楽で
あたしの知らない自己満足

愛してない 愛してない
これっぽちも愛してないのに
拒みきれない臆病者には寂しさと偽善が渦巻くの
「かわいいね」
と、言いながら
あたしを愛でるその行為
閉じた心が開きだす

ヤメテ…!

繰り返される甘い行為に慣れたころ
不穏な影を孕んだ安心が
あたしの本心を上塗りする
これっぽちも愛してないのに
閉じた心が開きだす
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