鬼軍曹コアラ!/結城 森士
ばならない。父は俺に母を頼むといって3ヵ月後にサイパンで戦死した。そしてすぐに理系の大学生であった若者にまで赤紙が届き、戦地に赴くことになった。若者は年老いた母の為にも、必ず生きて帰らなければならなかった。
一方、青年も国に置いてきた許婚のことを思っていた。もし生きて帰れたら必ず幸せにすると彼女に誓い、もし戦争が終わって2年たっても帰ってこなかったら自分のことは忘れてくれと言い聞かせた。別れが辛くなるから、列車の見送りに来るなといったのに、彼女はあの日プラットホームで待っていた。一生待っていると言って泣き崩れてしまった彼女のために、生きて祖国に帰らなくてはならないのだ。
若者が意を決したよ
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