鬼軍曹コアラ!/結城 森士
 
たように口を開いた。
「……敵兵がいたら投降しますよ、俺は…」
 青年は初めて若者の言葉に語気を強めた。
「…当たり前だ。無駄死になどするものか」
 2人は力なく目を合わせ、笑い、そして黙り込んだ。

 そのとき、思いがけず頭上から、今、最も聞きたくない人の声がした。
「貴様ら生きて辱めを受ける気か!それでも帝国軍人か!」
 2人は瞬時に麦茶を飲んだつもりが醤油だったくらいかそれ以上の衝撃を受け、すぐさま直立不動の姿勢をとった。
「申し訳ございません権藤軍曹殿!」
「決して敵軍の軍旗に下ろうなどとは!」
 するとまたもや頭上から軍曹の声が聞こえてきた。
「俺の聞き違いだった
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