夢のなか/アンテ
「メリーゴーラウンド」 3
夢のなか
夢のなかにいると判っているのに
夢から覚めることができない
くらいつまらないものはない
小説や映画なら
自分の頬をつねれば覚めるけれど
薬の効き目はそんなもので切れるわけがないのに
それでも無駄な試みをする
意識が途絶えることについては
ぼくはちょっとした権威だ
多い時には一週間に数回
腕や胸の血管から薬が投与されて
スイッチが切れて
何日か後にまたスイッチが入る
途絶えるときはいきなり無に突入するのに
覚める時はかならず
無と現実のあいだに夢の段階が入る
きっと失われ
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