十年の、事実/プテラノドン
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事態や状況がどうあれ、こうなっているはずだと、
当たるもんだと、
何処かで馬鹿笑いをしているもんだと。想像しながら歩いた。
この雨雲のはるか高みでは悠々と飛ぶ飛行機がいるもんだと。
僕は今でもよくよく思っているよ。いつかは皆と、
夜通し機内でひそひそ話をしたい。
ひょっとしたら今頃、
地上には僕らみたいなアホがいるかもな。とか、
その頃にはとっくに錆び付いているであろう
利根川に沈んでいる一台の自転車の話しを。
時折、押し殺せない声と混じりあいながら。
もしくは今日、僕らが競馬場で見た
老夫婦のように、車椅子に座る老婆の耳元に
話しかけた老人のその、優しい声で。
当たるといいね。でも、外れてもいいかもね。
僕らは老夫婦もきっとそう考えたに違いないと信じていたし、
願っていた。当たるもんだと。
これから十年先、どんなことが待ち受けていようとも。
引き返そうったって無理なのだから。
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