私の夢/光井 新
精さんは出てきてくれませんでした。
私は夢の中で妖精さんに会う事を諦めて、もう一度お花を育てる事にしました。私の花壇に綺麗なお花が咲けば、そこに妖精さんが来てくれるような気がしたからです。
鬼の娘という自分の運命を受け入れて。お花の為に私は心を鬼にしました。
鬼の花壇に綺麗なお花が咲きました。だけど結局、妖精さんは来ませんでした。
がっかりしたその日の夜に夢の中で、引っこ抜いた雑草や殺した虫さん達に言われました。鬼には妖精さんの姿が見えないそうです。私は悲しくなったけど、何故だか涙は出ませんでした。
新しい朝、私がちゃんと鬼に生まれ変わったような朝。前よりもずっと仲良しになったパパとママに「おはよう」って言った時、大好きなパパとママに毎日会えるから、もう妖精さんには会えなくてもいいやと思いました。
夢から覚めても、お庭の花壇を見れば綺麗なお花が咲いていて、このお花が私の夢になりました。お花の為に、大切な物の為に、私も、パパとママみたいな立派な鬼になりたいと思います。
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