Erika/結城 森士
 
たたいていた。
 エリカは窓際に歩み寄って窓を少し開け、風を部屋の中に迎え入れた。
「風さん、こんばんは。あなたのおかげで部屋が寒くなっちゃったわ」
 少し笑いかけながら冗談を言ったつもりだった。しかし、風は泣いていた。
「風さん、どうして泣いているんだい」
 今度はジェフが尋ねた。
「分からない。だけど、泣きたくて泣いているんじゃないんだ」
「理由も無いのに、どうして泣くの」
「なぜかは分からないけど、とても悲しくて」
そういって風はビュウビュウ泣いた。
その声を聞いているうちに、エリカもなぜだか悲しくなって、一筋の涙を落とした。
ジェフは二人が泣いている間、ずっと動かなかった。

壁にかけてある鳩の時計が、夜中を知らせた。
エリカはこんな時間まで起きていたことは今まで一度も無かった。
二人はどちらともなく泣くのを止めた。そして風は言った。
「もう、行かなくちゃ」
エリカは尋ねた。
「どこへ行くの?」

未完
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