ゆめ 〜月と海〜/ さくら
 
したたる、したたり、

侵食しはじめた月夜に
手足はどこまでも深く伸びている

やさしく影を包み込むようにして
月は、静かにあたたかい

当たり前のようにそこにいて
闇が照らすはずもない風を、
昨日の海に映している

やがて訪れる夕凪、
陸には、まだ、いない


遠い遠い、海から来たの
波の模様は、青だったかしら

こびりついた青は
星をこぼしはじめた空に、たしかに、あった


たどり着いた記憶の端っこでは
形を変えた日常が、しきりに叫ぼうとしている
手足の、あるいは、忘れかけた昨日の骨を
透明なわたしの手がかりとして


淡い、はかない夜は、
確かめるようにして泳ぐ

ゆらゆら、月はもう、

忘れてしまった輪郭を、夜に重ね続けて
繰り返される未来の先端に

ゆらゆら、また昨日の青をみつけては


まだ、わたしがわたしであるということに気づく



もう、 朝が生まれる

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