「オルゴール」 (リレー小説・三題噺)/佐藤犀星
ぶったオルゴール。かつて3人で過ごしたこの部屋に、2人はいない。(メコ・2回目)
親友の帰った部屋で、私は一人、この部屋を見渡した。あの人と、おじいさまと、私。三人で過ごした部屋。この匂いが心地いい。本の匂い。オルゴールの音。止まってしまえばいいのに。この時間と空間のままで。(波栖・3回目)
聞こえる。この邸に取り残された、今やたったひとつの音。柱時計が零時を告げてくる大きな音。私を本当の家族のように迎え入れてくれた使用人たちも、暇を出してしまった。誰もいない。
そして今夜、ようやく彼女にも別れを告げることができた。
生まれ育ったこの街を離れるのはつらいけれど、新しい始まり
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