山上ノ儀式 /服部 剛
 
旅先の六甲山頂で酔いどれて 
飲み干したビールの空缶を 
目一杯に、握り潰す。 

それは寂しがり屋な自らに 
凍てついた手を振る、 
決別の儀式。 

あるみにうむの如き 
軟弱だった亡骸を
山頂に置いて 

孵化した真新しい私は 
凡庸な日々へ、下山する。 


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