寅とさくら 〜旅の便り〜/服部 剛
きみとぼくはどうやら
寅さんとさくら
みたいになれそうだ
ほんとうは兄ちゃんな、
おめぇのいうように
「ケイアイ」されるほど
キレイな人間でもねぇが・・・
おめぇの手紙の最後の
「ケイアイ」という言葉に
兄ちゃん思わずほろりと来ちまって
涙がぽろりと出ちまった・・・
( 流れる雲の旅人は、寂しい空を、
越えなきゃならねぇサダメです )
旅先のステーキ屋で無理して
年に1度だけの
神戸の牛を食いながら
いつまでたっても鼻ったれの兄ちゃんは、
右手にさくらの手紙を持って
左手に鼻をかんだちり紙を持って
その端っこで、こぼれる涙をふいた後
ポケットからペンを一本取り出して
おめぇの手紙の余白に一句
旅先で神戸の牛を食らいつつ
舌に混ざるは
柔い肉としょっぱい涙
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