君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
感じられる。

 あの日――私の人生が変わったあの日、私は体育の時間に突然倒れ込んだ。クラスメイトに心配されながら保健室に運び込まれ、しばらく休んだのだが、どうにも体調が良くならない。そこで、念のために母と病院に行った。念のため。そう、ただそれだけのはずだったのだ。
覚悟や予感など、少しも無かった。早く薬をもらって、帰ってだるい体をベッドに沈めたかった。両親と一緒に診察室に呼ばれたときでさえ、私は何の予期もしていなかったのだ。
その日、医師から神妙な面持ちで告げられた検査結果は、私にとって現実味のない他の誰かのことに聞こえた。病名は忘れてしまったけれど、とにかく酷く悪いのだということだけは
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